異常事態(5) の続きです。
6月3日、改正著作権法が原案通り成立しました。
2005年1月1日の施行から、著作権保有者が「海外版CD輸入の禁止」(邦楽・洋楽の区別なし)、「書籍・雑誌の公衆貸与禁止」(貸本業だけでなく、営利企業による顧客サービスを目的とした無償の図書室など(*1)も対象(政府の答弁書(衆議院サイト) 参照))を行うことのできる権利が新規に導入されます。
(*1)一部大手スーパーマーケットが店内に設置している児童図書文庫など。
衆議院文化科学委員会で弘兼憲史、高橋健太郎両氏が参考人として発言 (《陸這記》 crawlin’on the ground) によると、出版業界はとうに動き始めていて、2月9日の「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」の総会では「出版物貸与権管理センター」(7月設立予定)の事業モデルが説明されています(貸与権管理センターの事業モデル (電子出版の街角) 参照)。これによれば、
新刊コミック貸出禁止期間 3ヶ月
書籍貸出禁止期間 6ヶ月
レンタル許諾料 本体価格と同額
とされています。レンタル許諾料が定額になっていて、たくさんレンタルされても収入が増えるわけではないことからも分かるように、報酬請求ではなく貸与禁止に主眼が置かれています。
実際の運用がどのように行われるかはまだわかりませんが、最悪の場合は、著作権保有者の都合や感情によって、小説・マンガや音楽に接する機会が大幅に制限される危険性もあります。それだけの強大な力を著作権保有者に与える内容が今回の改正にはあります。
以下は備忘録のためのリンクです。
- 衆議院文化科学委員会で弘兼憲史、高橋健太郎両氏が参考人として発言 (《陸這記》 crawlin’on the ground)
貸与権を求める側が準備している「出版物貸与権管理センター」についての意見など。 - 60年代のクリエイティヴィティを支えたものはなんだったのか (《陸這記》 crawlin’on the ground)
若い年代が生き生きとした文化の刺激を、浴びるほど受けられるような場やメディアの重要性について。現在の権利者側の主張への疑問や意見、「知財立国」戦略への疑問、など。 - 衆院文科委(3)・The Defoliant (The Trembling of a Leaf)
- 準備はいいかい? (万来堂日記)
- 6月、これからスタートだ。 (BENLI)
- 衆議院:文部科学委員会での付帯決議 (OTO-NETA)
- 国会はエンターテイメントかよ!(その4) (万来堂日記)
6月2日の委員会質疑の概要。 - 著作権法の一部を改正する法律案 衆議院文部科学委員会で可決 (Dubbrock's Dublog)
- 力及ばずでした (owner's log by Kentaro Takahashi)
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今回の著作権法改正に抗議して、CDの購入を差し控えると意思表明する方々が散見されます。しかし、レコード輸入業者やレコード販売店には、私たちと一緒になって著作権法改正に反対してくれた方々が多くいたのです。恩を仇で返すようなことをするのは、あまり褒められた生き方ではありません。そもそも、全国のレコード店の中でレコード輸入権創設に積極的に賛成したのは、レコード商業組合傘下のレコード店だけなのですから、それ以外のレコード店には罪がありません。
- VIP (BENLI)
6月2日の質疑で取り上げられた(国会はエンターテイメントかよ!(その4) (万来堂日記) 参照)、法案が参議院を通過した直後の4月24日に行われた浜崎あゆみのコンサートに、文化庁から二人が招待された(自費だったが、チケットは日本レコード協会会長が用意)件について。 - 審議会の問題点 (Copy & Copyright Diary)
- 気晴らしに (owner's log by Kentaro Takahashi)
6月2日の質疑での文化庁側の説明の問題点など。 - ●6842 いま、おもえば、やはり拙劣だったレコード輸入権反対運動 (笹山登生の政策道場)
以前から野党寄りの反対運動に批判を行っていた笹山登生氏(元衆議院議員)が、改めて振り返っての批判と意見。運動の中心となった高橋健太郎氏や謎工氏の発言もあります。 - 新聞サイトの記事の検証 (Copy & Copyright Diary)
- ゲイトウェイ国家になる日本 (《陸這記》 crawlin’on the ground)
外務省が「アジア中でビジネスを行うためのあなたのゲートウェイ」というキャッチフレーズでアメリカからの投資の勧誘を行っていることと、今回の著作権法改正とが関連しているのではないかとの見方。5月30日の 結局、おおもとはアメリカ政府からの圧力なのか? にも関連記述があります。